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被災のアーティストたちへ

ドイツの哲学者で、音楽評論家、作曲家でもあったユダヤ人のテオドール・アドルノ(1903年-1969年)の言葉に「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である」というのがあり、その解釈をめぐって長く議論されている。

詩という部分を芸術全般を指すとして考えてみれば、人間が芸術を生みだしたのと同様に、もっとも野蛮であるアウシュビッツをも生みだした以上、芸術とアウシュビッツは等価であって、つまり芸術も野蛮の範疇に入るのだと解釈できる。

もうひとつの解釈は、社会がとんでもない状況になっている時に、慰安や感動、陶酔だけをもたらす自己目的的な有用性がない芸術活動ができる人間性は野蛮であるというものだ。つまり、そういう非常時には芸術活動なんかしてはいけない、もっと他に大事なことをしなさいという戒めだろう。他にもっと深い意味があるのかもしれないし、アドルノはまちがっているのかもしれないが、今この言葉がひじょうに重く感じられることは確かだ。

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今、3月11日に東日本を襲った大震災で、日本の社会がアウシュビッツ時代のドイツと似たような状況になり、悲惨な出来事を前にしてアーティストは同じ命題を突きつけられることになった。すなわち、芸術は何のためにあるのか。こういうときに芸術に何ができるのか。あるいは打ちひしがれたアーティストに芸術が何を与えてくれるのか・・・。そこで沈黙したアーティストもいれば、それでも厳しい被災地へ出かけて行って、傍目には滑稽に見えるような活動を懸命に続けるアーティストもいる。どちらがあるべき姿なのか、代表にはわからない。

ひとの駅かわうちで作品を展示していただいた作家さんも、多くが被災者で避難中のために活動を再開できるような状況ではない。生活の目処がたたなくて先も見えないのに絵を描いている場合じゃないという気持ちもあるはずだし、避難先に活動できるスペースがない物理的な事情もあることだろう。アドルノの言葉と同じく「震災以後、絵を書くことは野蛮である」を自分に向けて、自らを追い込んでいるのではないだろうか。多くの作家さんは沈黙したままだ。

しかし、実はアーティストにとって、その問いかけはアートを志したときに既にあったのだ。アーティストは、内部的な震災を経験して、すべてを失った焼野の中から出発している。アート以外を犠牲にできるかの葛藤を克服できたからこそ今アートの世界にいられるのだ。代表が見てきたアーティストは、例外なくアーティストではないひとよりずっとハートがピュアで強くて逞しかった。アーティストはアートがたまらなく好きなのである。アートがいちばん大切なのである。苦難を知りつつまなじりをあげて踏み出した隘路なのである。代表はそう思っている。

だから、廃墟の風景と不安な未来を前にしても、なお真善美を賛美することに、なんの後ろめたさもためらいも必要ない。このような時こそ、想像力と創造力の世界であるアートには、絶望した心を救う力があると信じるのだ。その証拠に、自分自身がアートで救われてきたじゃんじゃなかったのか。(続く)

コメント

モンマルトルの貧乏画家たち
お早うございます。
一気に猛暑が襲ってきましたね。
首都圏では計画停電の危機が迫っているようですが、これは空襲警報みたいなものでしょうか。

モンマルトルにいた画家たちは殆どみな死後にその真価が認められて、生きてるうちは貧困のどん底にあったようですね。
ゴッホなんかは狂気のふちに立たされていて、
それでも絵をやめることはしなかった。
彼らにとって絵とは人生そのものだったのでしょうね。
私なんて彼らとはまるでラベルが違うんですが、その精神だけは学びたいものです。





酔いました
昨夜は、薗田巌さんの企画展と池田均さんの個展について書きたかったのですが、アルコールが一杯入って、薗田さん池田さんの想いにも酔ってしまって暴走してしまいました。落とし所がわかりません(笑)。
アートは作品だけで評価されるものもありますが、なにか伝説がセットになると注目されるようになるようですね。歌麿なんて海外へ送った陶器の包み紙だったのが評価されてブレークしたわけですが、それまでの日本人にとって浮世絵はマンガみたいなものだったでしょう?アートは技術の巧拙だけで評価されないところが怖くもあり、アーティストでないわたしにとっては面白いところでもあります。音楽でも同じだと思います。演奏や発声の技術が優れているからといって評価も高いわけではないですものね。
俗なことかもしれませんが、そういうようにアートをプロモーションするのもひとの駅の役目のひとつだと考えています。
ここへきて、作家さんたちが活動を再開されたという連絡が多くなってきたのでうれしいかぎりです。これから紹介していきたいと思います。

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