三方一両損

  代表は文章を書くのが不得手である。理由はみっつ。

 ひとつは、遅筆のため時間がかかるからである。まず、言いたい事が文章で表し切れない。自分の文章力が無いこともある。が、語句で物事なり心の有り様を正確に表現することは不可能だということがわかってしまっているので、書くことにはジレンマがつきまとって常にブレーキが働いてしまう。だから遅い。

 もうひとつは、明るい内に書いたり読んだりということができない性質だからである。昼間は外で動いていないといけないという価値観を代表は持っていて、明るい時間帯に部屋でじーっと書き物だとかゲームなんかをしていると損をしたような気分になる。貧乏性なんだね。

 みっつめは、夜遅い時間になると書けない。頭が冴えてしまって眠れなくなるからだ。23時が限界。

 というわけで、この、便箋たった二枚の手紙を書くのに二週間かかってしまった。

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 宛先は代表の中学時代の恩師勝子先生。現在は押し花作家だが、ひょんなことからもう一人の恩師の木幡先生が挿絵と文で綴った冊子「ぶらっとふるさとえださんぽ」を勝子先生に送ることになり、その冊子というのが、5月に同級生9人で裏磐梯に一泊旅行をしたときに、個々に木幡先生のサイン入りで渡されたものの内の一冊になったという事情が、遅筆で暗くなってからしか机に向かえない代表の苦難を更に厳しいものにした。どういうことかというと、こういうことだ。

 勝子先生と木幡先生は川内中学校の元同僚だ。勝子先生は保健体育の担当でテニス部顧問。まるで男みたいだった。一方の木幡先生は科学の担当で野球部顧問。試合に負けると自分の頭をクリクリ坊主にしてくるくらい、いつもピリピリした緊張感を漂わせ近寄り難かった。この二人が何十年か後に押し花をしたり絵を描いたりするなんてことはお互い想像できなかっただろう。代表たちだって夢にも思わなかった。

 数年前の同級生の家でのクリスマスパーティの席で、木幡先生に勝子先生の押し花作品を見てもらったときには「あのかっちゃんがなあ・・・」と驚いていたし、今年の双葉郡美術協会展で勝子先生に「ぶらっとふるさとえださんぽ」のことを話したときには「なにぃ!」という反応だった。勝子先生のそういうところ、興味がある領域への好奇心というのは子どもみたいに強い。どうしても「ぶらっとふるさとえださんぽ」が見てみたいということだった。

 で、代表のを送ろうと思ったんだが、木幡先生に申し訳ないという気持ちもあり、代表謹呈とサインが入った受け取った「ぶらっとふるさとえださんぽ」を受け取った勝子先生の気持ちはどうなんだろうとか、悩みつつ同級生に連絡したところ、その中のひとりが「自分のを勝子先生に送って」と、房総旅行のときに持参してくれた。

 さあ困った。自分が蒔いた種だが、ますます複雑にしてしまった。勝子先生と木幡先生と同級生と自分が納得できる理屈というか、もしかしたら嘘に近いものを考えないと引っ込みがつかなくなった。

 それから代表は、毎日毎日脂汗を流し考えては書き書いては破って、ようやく落語の三方一両損(*1)的な、言うならば四方一両得の、その中味についてはプライバシーのことがあるから書けないが、書けないのが残念なくらいぴったりはまる理屈を思いついた。よかった。代表の取り越し苦労だったのかもしれないが、ほっとした。今頃勝子先生も「ぶらっとふるさとえださんぽ」を手にされているだろう。代表もまた今日からブログが書ける。

(*1:左官の金太郎という者が3両拾い、落とし主の大工の吉五郎に届けるが、吉五郎はいったん落とした以上は自分のものではないからと受け取らない。大岡越前守が1両足して、2両ずつ両人に渡し、「これで三人が1両ずつ損したことになる」と納得させて解決したという話。)
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コメント

勝子先生にカレンダーのお礼の手紙(写真のDVDを添えて)を出した。
お返しに押し花の作品が届いた。
恐縮。
来年、私の撮った写真パネルを送る約束をした。
No title
返しても返しても何倍にもなって返ってくるよね。自分たちは素晴らしい先生方に出会えました。ほんとうに頭が下がります。

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