T先輩

 古い付き合いのT先輩がいました。技術系の学校を出ないでたたき上げて仕事を覚えた苦労人で、文学や哲学の話ができる。そういうところでとても気が合った先輩でした。あるときT先輩は「花門に連れて行ってくれ」といいました。「いいよ」代表とT先輩は約束しました。
 
 花門に行く日になりました。T先輩はドタキャンしました。「わりい。友だちの飲み会がはいっちまってよー」。代表はむかっとしました。それからはT先輩と距離を置くようになりました。

 間もなくT先輩は病気になりました。心臓の病気です。代表が呪いをかけたわけではありません。しかし、代表の人生のたくさんの方々との付き合い経験から、病にかかる多くの人を見てきて「心の奥で何かから逃げようとして、それが病気となってあらわれるのではないか?」と考えていました。だからT先輩もそうだったのだろうと思っていました。心や体は何かから逃げることでストレスになる。そのストレスをため限界点に達すると、悲鳴をあげて病気という形で吹き出すようになっている。T先輩もついに限界がきたのだろうと。呪いはかけませんでしたが、本人が原因をつくっているんだからしょうがない、と思いました。

 T先輩は痩せました。顔色も悪くなりました。
 
 これも代表の推測ですが、心や体にストレスになるようなことをなくせば病気でなくなる。たとえば心の病の場合に、ストレスになっている原因を本人が認めたときに治ってしまうということがあったりする。でも、たいていの場合、ストレスになっている原因には本人も気づいていない。

 代表は、T先輩との間に隙間をつくったお互いのわだかまりを消そうと思い、今度は代表から花門に誘いました。

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 代表の想像はほぼ合っていました。T先輩が若い時に情熱を傾けた仕事。それがマンスールさんが今でも大切に乗り続けているホンダのスクーターFREE WAYでした。ボロボロのFREE WAYを見たT先輩は泣いた。涙を流したわけではなかったが、心の中で泣いている先輩の姿が代表には見えました。そして、「これ、おれがが直してやるよ」といいました。ああ、これで先輩の病も良くなるかもなー、と代表は思いました。
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