作物は分身?

 「米は手をかけれなかけるほど美味くなんだよ」と、よしたかさんは代表に教えてくれた。よしたかさんは川内村で合鴨を田んぼに放す農法で献上米になったこともあるほどのおいしい米を作っているが、そういわれたとき、漠然とそういうこともあるだろうとは思ったけれども、本当の意味はわからなかった。当然だろう。代表は米作りなんてしたことがなかったんだから。

 しかし、代表も毎日畑に行って作物を観察するようになると、よしたかさんのいっていた意味がだんだんわかってきた。よしたかさんの言葉どおり、作物にも人間と同じ感情というものがあるのだ。

 例えば、あるとき、このプルーンの木が「助けてくれー」と叫んでいるのが聞こえた。幻聴か?

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 近づくと、一枚の葉の裏側に毛虫が隠れているのが見えた。それで助けを求めていたみたいなのだが、きわめてかすかな声だったが、「助けてくれー」がたしかに音として代表の耳元に届いた。植物にも心があり、作り手を見て反応していた。もちろん、プルーンといわず、ぜんぶの植物がそういうふうにできているものなんだろうと思う。

 植物に感情がある。ってことは、作物を育てるのは人を育てるのと一緒で、けっこう面倒そうである。

 先日、オクラの種を植えたところに水をやっていたら、代表の畑の師ともいうべきイシイさんから「あんまり甘やかしちゃだめだよ!」と注意された。必要以上に水をやると水を欲しがるように育ってしまうんだという。水がないといじけ、水をもらうと元気を出すようになる。そして、どんどん大きくなる。

 しかし、そういう作物は水太り状態で味がないらしい。店頭に並んでいる野菜のほとんどがそういうものだそうで、このあたりで美味い野菜はただひとつ、カインズホームの野菜売り場にある、ハセガワさんが生産したトマトだけで、並んだとたん売り切れてしまうくらいなんだという。

 せっかく自分で作物を作っているのに、わざわざ水をやって甘やかして不味くしてどうする。雨が降るまで待つか、自分で水をさがすことを覚えさせなさい、と教えられた。へー、そういうことなんだ。

 以前テレビで、ある有名な花園の園長が「花たちを決して甘やかさない。水や食べ物は自分でさがさせる。その方が美しい花をつける。」と話してしているのを見たことがあったが、あれはこういうことだったのかと、今になってようやく納得できた。花も野菜も同じ。たぶん人も同じ。ある程度厳しくして育てたほうが、収量は少ないが花は美しく作物は美味しく人はたくましくなる。川内村の野菜があんなに美味いのは甘やかさないで育てるからであった。わかる人にはわかっていたということだ。

 作物をつくることは、即ち、動物や人間を育てるのと同じ。生物は、適度に可愛がれば頑張る。その反面、ちょっとしたことで甘えたりふてくされたりするすねた面もあわせ持つ。個体ごとに性格もちがい、作り手を馬鹿にしてサボったりウツのふりしたりする野菜もある。愛情を注がないといけないが、可愛がりすぎてもだめ。最後には味となって表れる。笑うかもしれないが、ほんとうとうにそうなんだよ。

 つまり、作物の出来具合には作り手の人格がかなり影響する。作り手そのものといってもいいかもしれない。だんだん野菜作りが怖くなってきた代表であった(笑)。
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