代表の手は語る

  本田宗一郎に『わたしの手は語る』という著作がある。右利きでせっかちな性格の著者は、右手に刃物やトンカチを持って左手を傷付ける。右手は傷がなくてきれいなのに、左手は深い傷ばっかりで不公平だというのである。それだけの話なんだが、著者の人柄がにじみ出ていてなんともいいのである。

 この『わたしの手は語る』という本は、本田宗一郎が書きたくて書いたのではなく、藤沢武夫の強いすすめがあって渋々書いたらしいが、出来上がったのを読んだ藤沢武夫はえらく落胆したといわれている。藤沢武夫としては社員を啓蒙し鼓舞いするような内容を期待したらしいのだが、そうはなっていなかった。

 副社長だった藤沢武夫は文章が上手かった。涙を誘いながら自分の言いたいことを伝えるということができた。社長の本田宗一郎にはそれ以上のものを求めたかったのだろう。たしかに、藤沢武夫からみれば自分の自慢話ばっかりみたいな『わたしの手は語る』だっただろう。けれども、誘導的な下心が鼻につく藤沢武夫の美文よりも、幼児的とさえ思えるストレートな本田宗一郎の駄文の方が代表の心には響く。

 ところで、代表の手も語る。

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 本田宗一郎と同じく、せっかちで右利きの代表の左手も、小作を始めてから傷が増えだした。

 青い丸はマメを潰した跡。スコップの柄があたる場所なのでマメができやすい。これは力任せに無理やりスコップを振り回しているからで、まだ使いこなせていない証拠だ。

 橙色の丸は竹による切創。えんどう豆の棚を作るために竹を切っているときにスパッとやってしまった。竹の割れ目は鋭くて刃物と同じだ。わかっていながら、ちょっと手袋を外した隙に。油断した。

 赤丸はカッターで刺した。カッターの刃を出したまま右手に持って作業をしている間に、カッターを持っていることを忘れて自分で刺した。バカみたいだ。こんな傷ばっかりでは代表の左手も報われないよね。
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コメント

成長の過程
傷の数だけ人間として、農業者として成長すると考えればいいのではないでしょうか。でも気を付けてください。

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