ひとの駅完全撤収計画①

 報告することがたくさんあって、何から書いたらいいおnか、頭の整理がうまくできないが、とにかく文字を並べてみる。

 今回の川内村行きの目的は、ひとの駅の作品撤収のための段取りと、その後の展開をどうするかの相談が主だった。作品撤収のための段取りというのは、まず大工のシゲルさんと打合せをして、撤収日を決めること。その後の展開をどうするかの相談というのは、新しい拠点をどこに置いて、どういうことをやっていくのかをトオルさんと幹夫さんと話し合うことだった。

 それにくっつけて、長女が乗っていた軽自動車を親父に届けるだとか、NTTの工事の立会いだとか、役場の新しい窓口の確認。長女のプチ引越しとザ・ラヂオカセッツのライブの付き合い。鶴田松盛さんへの挨拶。中村亨司さんの作品撤収などがくっついたので、タイトなスケジュールになった。
 弱音は吐きたくはないけれども、さすがに代表も疲れが溜まっている。ひとの駅と団地の仕事と本業とで、今年度ずーっと忙しさ慌しさ心配の高原状態だった。代表の身体は悲鳴をあげると眼の血管が破裂して真っ赤になるんだが、今そうなって血の涙を流している。励みと言えば、早くこれを終わらせて、すっきりした気持ちでうまい酒を呑みたいということだけ。酔いつぶれ、泣いて透明な涙を流したい。それだけ。正直苦しい。

 しかしながら、こういう経験というのはそうそうできるものではないので、ぐっと腹に力を入れ直して、しっかりと脳ミソに刻みながら前進したいと思っている。何かあったらその時はその時だ。

 では1日目から。10日の朝、代表はKトラで、長女は自分のライフを運転して川内村に向かった。長女は初めて高速道路を走ったから緊張したろうけど、引率した代表も緊張した。

 家の近く。圏央道の鶴ヶ島インターから入って、関越道を都内に向かって新座料金所を出て外環道を外回りに走り、三郷から常磐道に乗った。関本サービスエリアでトイレ休憩し、再び常磐道を北上して四倉サービスエリアで昼食にした。ここの下り側でオオウチさんがテント店を出すという情報があったんだが、まだ再会できていない。ガセネタだったのか?

 昼食の後、広野町の鶴田松盛さんのところへ挨拶に行く予定だったが、鶴田さんから外出先から戻られるのが遅くなりそうだと連絡が入ったため、改めることにして川内村に直行し、トラブルもなく無事に到着。長女の運転はけっこう上手だった。ずっと時速80kmで走ったので、7時半に川越を出て、川内村に到着したのは14時近かった。

 荷物を降ろしている間に親父が顔を出した。長女も一緒だったのでうれしそうだった。軽自動車を持ってくることも、それを渡すことも親父には内緒にしていた。事前に話せば必ず「もったいない。いらねぇ。」って言うに決まっている。

 とにかく戦中を知っている世代は物を手放さない。代表の知り合いのお母さんなんて、お菓子の缶から飲料が入っていたペットボトル、ヨーグルトの容器まで全部とってある。そのために大きくて立派な物置まで作ったというので、どっちが不経済なんだかわからない。

 代表の親父も、捨てないくせに、猫車や農具や工具を雨ざらしにして錆びさせている。それでアクティバンもボロボロになったんだが・・・。

 親父は、なんで2台で来たんだ、不経済だろうといちゃもんを付けはじめたが、親父にあげようと思って持ってきたんだよというと、急に「ほー」と興味を示した。予想通りだ。ただでもらえるものはもらう。親父の性格は知り尽くしている。

 代表は営業マンになって、ライフの使いやすさとか経済性について説明する。ここで押し付けてはいけない。プライドを傷付けないように気を配りながら、いらないなら持って帰るよ、てなスタンスで、こませを撒いて魚が寄ってくるのを待つように親父が身を乗り出してくるのを待つ。「んー、いいなー」と親父が口にした。ここだ。用意しておいた春日八郎のCDを取り出して『別れの一本杉』を流す。

♪泣けた泣~けた 
あの娘と別れた哀しさにぃ~ 
こらえきれずに泣いたっけ~

「あーいいなー」
 もう親父は涎を垂らさんばかりだ。「乗ってみれば?」と言って鍵を渡す。親父が鍵を受け取った。これで半分自分のものになった感覚のはずだ。しかし、親父の心は葛藤している。「今のクルマの車検が残ってんだ。もったいねぇもんなー。まーだそっちで乗ったらいいべ。」決められない。それだって計算済みだ。

 「こっちはこっちでタイミングちゅうのがあっかんね。とにがぐ一回置いで行ぐがら、気にいんねえならほんでもいいよ。○○子(家内の名前)が乗っからさ。」親父の性格を知り尽くした、代表の家族全員がかりの大芝居なのであった。

 その後の展開としては、親父がそのまま受け取ればそれでよし。長女が新しいクルマを買う話を親父が知って、お金を出してくれると言ったら少しだけ負担してもらうという二本立てだったが、予想通りそうなった。帰るときに「クルマを買うときは電話寄こせ。じいちゃんが出してやっから。」と長女に耳打ちしていた。自分のクルマを買うのに金は出さないが、孫のクルマには出す。結局は同じことなんだけどね(笑)。

 余談が長くなった。

 川内村役場に連絡。役所は組織も人事も年度でガラリと変る。今年度の組織がどうなったか。ひとの駅の窓口はどこで担当はだれになったか。新しい担当に業務が引き継がれているかを確かめた。

 川内村役場の組織は大きく変化した。というよりも、震災前の組織に戻ったという方が正しい。震災後、産業振興課をベースにして復興対策課がつくられ、そこに復興関係の人と業務をすべて集中させたんだが、その段階を終えたという判断で、復興対策課が廃止されて産業振興課が復活した。しかし、除染がまだ終わっていないもので、復興対策課の中にあった除染係が産業振興課に入った。ひとの駅の経緯をよく知っている秋元敏博さんが昇進して産業振興課長に就いた。ひとの駅の直接窓口は産業振興課になるので代表としてはひじょうに心強い。

 それにしても、川内村もこういう段階まで来れたんだと思うと感慨深い。反対論も少なくなかったが、川内村をチェルノブイリにしたくないという強い想いで復興を率いてきた遠藤村長と関係の皆さんに改めて感謝申し上げたい。

 事務局だった齋藤昭蔵さんに電話した。中村亨司さんの作品撤収を伝えるためだ。中村亨司さんはいわき市美術協会で、川内村在住の作家川井弘子さんと職美展つながりで紹介していただいて、ひとの駅で個展を開催したことがあった。そのときの作品が残されたままになっていた。基本的に昭蔵さんと作家さんとの契約で取引されたものについては昭蔵さんに任せ、昭蔵さんも「任せろ」と言っていたのだが、ひとの駅をたたむために作家さんとコンタクトする中で、うまくいっていないところもあることがわかった。異常時だからしかたがないこともあるだろう。それで、作家さんに連絡して、要望があれば代表が間に入って後処理を引き受けることにした。中村亨司さんの場合も、昭蔵さんとの約束事に行き違いがあったのと、高齢で自分で作品の撤収ができないということだった。

 代表はついていた。ちょうど明日(11日)に、昭蔵さんが自分のコレクションをひとの駅から運び出す予定だという。そこで一緒に中村亨司さんの作品を確認しながら運び出すことにした。

 そこへ郡山に避難してそのまま住んでいる妹が、ひょっこり顔を出した。老人福祉施設の歓送迎会が川内村であるということだった。代表は、昨年末にトオルさんのところで催された若者の歓迎会に参加して、皆で頑張ろう!という雰囲気になって、勢いで他の参加者の女性を肩に手を回したというか触ったと思うが、なんとそのことが妹の耳に入っていて「あんちゃん、何した?!」とお叱りを受けた。いやー人間ていうのはそういうところが怖い。次回からは触れていいかどうかちゃんと聞いてからにしようと思いました。

 一日中降っていた雨が強くなってきた。それから代表は、大工のシゲルさんのところへ行った。中学校の一年後輩で、代表がこういうことを始めたときから15年もの間ずっと協力し続けてきてくれた。実際のところ、川内村で代表の活動を評価してくれる人なんてほとんどないが、シゲルさんは理解してくれる。信頼篤い友人だギャロップの看板もひとの駅の案内板もマンスールさんの額も、シゲルさんが手伝ってくれなかったらできなかった。

 今、この地域の土木、建設、設備業はめちゃくちゃ忙しい。除染復興狂想曲状態である。ひとの駅の撤収なんかかまってもらえない。だから、無理がきくシゲルさんに頼むしかないんだが、当然シゲルさんも忙しい。ゴールデンウィークも仕事と地域のイベントとで休みが無いという。一日だけ、4月26日だけ調整すればなんとかなりそうということで、予定より前倒しになってしまうが、もし人が集められなければ、二人だけでもやれるだけやることにして、その日をひとの駅の完全撤収日にした。

 代表の腹は決まった。もうそこで倒れてもいい。そうなってもその先は誰にも迷惑がかからない。

 少し安心もして、多少高揚した気持ちで、長女とかわうちの湯に行った。一日の終わりに温泉に浸かるのはほんとうに気持ちがいい。

 夜。長女と二人で、シゲルさんと奥さんの合作だという白濁液を飲んだ。シゲルさんのお母さんが白濁液造りの名人で、それはそれは美味しかったが、昨年亡くなってしまった。初めてトライしたシゲルさんと奥さんの合作もたいへん美味しい。白濁液というものは、心で造り心で味わうものだと思った。

 同級生にメールしながら就寝。夢の中でトタン屋根を叩く雨音が強くなっていった。

 あれ?!写真が一枚も無いや。写真を撮る余裕も無かったんです(笑)。

 明日につづく
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