おおとんぼと遊んだ夏

 オニヤンマのことを川内村では「おおとんぼ」と呼ぶ。大きいトンボだから「おおとんぼ」になった、と思うがほんとうのことはわからない。

 ちなみに、川内村にはおおとんぼの他に「いしかわとんぼ」「かみさまとんぼ」「よるとんぼ」などがいた。「いしかわとんぼ」は「しおからとんぼ」のこと。「かみさまとんぼ」は「いととんぼ」。「よるとんぼ」は夕方になると出てくる「かとりやんま」だ。「ぎんやんま」と「赤トンボ」は川内村でもそう呼んでいた。今では数が少なくなったのかあまり見ない気がするが、代表があまり川内村にいないから見ないのかもしれない。

 ひとの駅に行く途中の道におおとんぼが落ちていたので、写真でも撮っておこうと拾ってみた。

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 車にぶつかったんだね。大きな目なのに、車が近づくのがわからないらしくてよく代表の軽トラにも衝突する。このおおとんぼはしばらく代表の手の上でプルプル体を震わせていたが、ブンッと羽ばたいて飛んで行った。気絶していただけだったみたいだ。良かった良かった。

 子どもの頃、おおとんぼにはずいぶん遊んでもらった。

 おおとんぼのメスを囮にしてオスを捕まえるという遊びがあった。産卵をひかえたメスは、道路やひらけた原っぱ周辺を低く飛ぶながら往復する。それを待ち伏せて網で捕らえる。捕まえたメスの後ろ足2本を束ねて、長さ1.5メートルほどの木綿糸で縛る。それを胸にとまらせておいて、オスが来たらその前に飛ばす。オスもまた産卵のために低いところを往復しているわけなので、メスを見つけてやったとばかりに飛びついてメスの後頭部を尾っぽの先でつかむ。その瞬間を狙って糸を引き寄せオスをつかまえるわけだ。あの、オスがメスの下方で見上げながらホバリングするときのブーンという羽音の迫力や、相手がとんぼとはいえ、目の前での交接を覗き見する興奮を思い出す。

 捕まえたオスは尾っぽを3分の2ほど残して千切って、夏の土手に咲いていた白い小さな花を挿して飛ばした。尾っぽに花を挿されてしまったおにやんまは、ふらふらしながら高く遠くの空へ逃げていくのだった。哀れだったが、そういう行為のしょむなさで、子ども時代の爆発的なリピドーが緩和されていた気もする。

  そうだ。おおとんぼを追うときに歌う歌というのがあった。
♪どーろどーろ
 もどりげさねど
 あぶらむーしに
 どっぐどっぐのまれっとー♪

というのだったが、標準語に翻訳すると、

♪道路道路
 もどって来ないと
 油虫に
 ごっくんごっくんと呑まれちゃうよー♪

 二番もあったが、忘れた。
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