川内村報告 その4(おわり)

 郡山に避難中の馬場さんに会った。ちょうどお宅の前を通りがかったときに庭に立っているのが見えたので、挨拶しようと車をとめた。時々洗濯物が干してあるのが見えたりしたとき「いるのかな?」と思って訪ねたこともあったが、留守ばかりでなかなか会えなかった。今度でたぶん震災後3回目。遭遇確立20パーセントくらいだ。

 馬場さんは川魚の刺身を食べさせてくれる料理屋をやっていた。避難中に、もともと患っていたリューマチの状態が芳しくなくなって、調子が悪いときは座ったまま半日立てないときもあるんだよ、と話していた。奥さんの方は、やっぱり避難中のストレスが原因で味覚をなくしてしまったと聞いていたが、まだ快復しないらしい。残念だがもう料理屋は再開をあきらめているのかもしれない。

 「新兵器を作ったから見でげ」と馬場さんの隠れ家に招き入れられた。

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 アイディア満載のゴム鉄砲開発の苦労話を聞かせてもらった。これはよくできた強力なゴム鉄砲で、エアガンレベルの威力がある。木製ながら精度も素晴らしく、照準を合わせれば5メートル先のペットボトルのキャップ大の的に誰でも当てることができる。

 砲筒は園芸品の竿で、トリガーのバネは古くなったボールペンのものを流用している。ゴムは事務用品の輪ゴム。あとは木を削ったハンドメイドだが、本物と同じく分解してメンテナンスできるようになっている。訪問した警官が手にとってえらく感心していたらしい。

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 「これで的当てやって遊んだらおもしぇべ?それがらな、こんな太い鯉を釣ったんだよ。60センチだよ。3匹も。みーんなきれいにさばいで冷凍して、放射能はがったら100ベクレルだった。食えねがった。いやー悔しがったよ。それがらな、鮒130匹釣った。いっぺぇいっとご知ってんだよー。群れで真っ黒だよ。・・・・・・」いっつも馬場さんの話は遊びか魚のことばっかりだ。

 でも、馬場さん、なんだか寂しそうだったなー。負担にならない範囲で、また川魚料理を食べさせてもらえないかなー、と思った。

 Iさんにも会えた。クラッチケーブル交換作業のあと、雨が降ったのでちょっと早めにかわうちの湯で。いつもIさんが温泉にくるのはもっと早い時間で代表は遅い時間なもので、ニアミスばかりだった。

 Iさんはまた少し痩せたようだ。頭髪はほんとうに真っ白になってしまった。壮年の頃の、背がすらっとして俳優みたいにカッコ良かった姿を知っているだけに、ずいぶん小さくなってしまった今のIさんの前に立つのは申し訳ないような気持ちになってしまった。Iさんは、「もう左(半身)がダメ(動かない)なんだ」といった。

 ひと月に一度くらいの割りで郡山市の病院に行くようになったらしい。それまで行っていた平田村の診療所の治療では充分でなくなったということだろうか。川内村から船引町までバスで行って、そこから郡山市までは電車で。それから病院へ行っても診察が受けられないため、その日はホテルに泊まって、次の日の朝に並ぶのだそうだ。診察が終わるのは午後なので、また郡山で一泊して、次の日に川内村へ帰ってくる。病院に行くだけで3日かかる。

 しかし、Iさんは誰も責めていない。そういったことを淡々と受け入れていた。代表もIさんのように老いたいと思った。己が信ずる道を堂々と歩き、与えられた命をきちんと燃やして力尽きたいと思った。
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コメント

ゴム鉄砲は子供の頃の思い出の中でもベスト3に入る。
大人になっても遊び続ける心が羨ましい。
私も絵の制作を、子供に還って、「お絵描き遊び」として楽しく遊ぶように描きたいと思いました。
このゴム鉄砲は危険なくらい強力です。鉛の弾を使うと缶コーヒーの缶に穴を開けます。馬場さんが考える遊び道具はそういうものが多いです。
遊びはスリルが大きいほど興奮しますね。馬場さんはそういう理屈抜をきにして、自分で興奮する遊びを追及して発明しています。
「俺は馬鹿になり方が足りない。もっともっと馬鹿になるんだ。」と言っていました。

鶴田さんに馬場さんの岩魚の刺身を一度食べていただきたかったです。
正義の味方??
これは護身用に使えるんじゃないでしょうか。
最近通り魔みたいなのやら強盗やら、もし被害者が武器を持っていたら助かったんじゃないかと言うケースが多いです。
これなら銃刀法違反にもならずに、身の安全を確保できそうに思いますが。
これを女性が下げている姿っていうのも・・・
相当な威力なんで、たぶん銃刀法違反になるんじゃないかと思いますよ

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