鶴田さん作品展のオープニングパーティの報告

 5日の土曜日に、楢葉町のアートギャラリーG.TOOで、鶴田松盛さんの作品展のオープニングパーティーがあった。

 このパーティは、ギャラリーの床に車座になって、鶴田さんの作品を肴にして酒を酌み交わしながら、復興に頑張っておられる方々と交流しようという趣向とのことだった。代表も中学校の同級生10人で行った。

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 浜通りと呼ばれるこの地域は、文字通り海浜だから、東北だけれども冬でも温暖で桜が咲くのも早い。もう6部咲きといった感じだった。そして、梅や桃やこぶしやレンギョウが花開くのも一緒だ。福島の春はいっぺんにやってくる。
 作品は言うまでもなく素晴らしかったが、それにもまして、まず、このパーティの時期と時間の設定が絶妙だと代表は思った。桜の花の下。春宵の夕暮れ時に、恋の季節を迎えた生物たちの興奮が空気を震わせていた。人間は、かろうじて理性で本能をコントロールしていたが、恥じらいの衣を脱ぎ捨てるのにひと口の酒があれば充分であった。熱情の堰がいまにも溢れようとしているタイミングを見計らったようであった。

 加えて、出席者の顔ぶれが型破りだった。元気はつらつ地元の若きリーダーの方々と双葉郡美術協会のアーチストの皆さん方であったが、失礼とは思うが、ちょっと変人風変態気味の、リピドーを持て余している感じの人たちばかりなのであった。鶴田さんの周りに集まる人たちだから当然といえば当然だが。

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 というわけで、ちょっと波乱含みにパーティーは始まった。鶴田さんのご挨拶のあと、復興にかけるリーダーたちのスピーチがあり、代表も乾杯の音頭を取らせてもらったりした。それからスイッチがONになって、会場は沸騰した。

 代表はけっこう冷静だったんじゃないかなーと思う。とにかく、酒の力を借り(たふりし)て、絵の素人が大作家に議論を吹っかけられる機会なんてめったにあるもんじゃない。というか前代未聞。たぶん世界初。これが最初で最後かもしれない。代表はふだん聞けないことを聞こうと構えた。

「作家は作品を作る場合、どの程度構想するのか?」失礼な質問だと自覚しつつも、作家は作品にどれくらい責任を持つのかを知りたい一心で鶴田さんにぶつけてみた。

 鶴田さんは淡々と話し出した。
「考え得る限りの構想を練って取り組むが、制作の過程で変化する。どんどん新しいイメージが湧いてくるからだ。この時が最も楽しい。だから、構想した通りに完成することは無いのである。また、構想通りにできた作品はつまらないのである。なぜなら・・・」

 さあここからだ、と話の続きに集中しているちょうどそのときに、トントンと背中を叩く人がいる。
「代表!酒、飲んでる?はいはい、こっちに来て。こっち!」と酒のテーブルに連れていかれてしまった。酒を注がれて鶴田さんのところに戻ったときにはとっくに話題が変わっていた。もう一回話してくださいとお願いするわけにもいかず、いちばん大事なところを聞き逃してしまった。あきらめて新しい質問をぶつけた。

 ちょうど数日前に、44年前にロンドンの収集家の家から盗まれたゴーギャンとボナールの絵がイタリアで見つかったというニュースがあった。価格は合わせて15億円だっそうだが、絵の持ち主は、イタリアの車メーカーの元従業員で、国鉄の忘れ物としてオークションでたった6000円で買ったものだった。飾られていたのは台所。価値がある絵とはわからなかったのである。そういうおかしなことが起こってしまうのはどうしてなのか?はたして絵の価値を量る方法はあるのか?ないのか?

 再び鶴田さんは指を折りながら話しだした。
「絵の価値にはいくつかある。すなわち、
ひとつは作家の人間的価値である。
ふたつは作品の技術的価値。
みっつは創造的価値。
よっつが歴史的価値。いつつが・・・」

 そこまで聞いたところで、また背中をトントンと叩かれた。
「ちょっとこっち来て」と連れて行かれると、洋画家の熊坂行夫さんを紹介されたのであった。挨拶をして名刺を交換させていただいて、鶴田さんのところに戻ったときにはまたもやその話題は終わっていた。

 ものすごく残念だったが、もう一回聞き返すわけにもいかないので、またちがう質問をした。そうしたらまた背中をトントンと叩かれ「BMWのZ4は重い」という不満を聞かされた。また戻るとまた背中をトントンと叩かれて、「猪狩義人さんと遠藤道仁さんは双葉高校の美術部の先輩後輩だ」と教えてもらったり・・・。

 結局、そんな終わりの無い話みたいなことが繰り返されて、そうしているうちにお開きになってしまった。だから代表は、酒だけはたくさん飲んだが、肝心なことは何も聞けなかったのであった。まあ、もっと勉強して来いよという暗示だったのかもしれない。

 いいねー、こういうの。日曜美術館の100倍くらい面白かった。
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コメント

私も不完全燃焼でした。私が持っている経験と知識の全てを叩きだしても尽きないくらいの討論をして、「あなたから引き出せるものはそれだけか」と言われるくらいに全部を吐き出したならば、次のステップアップした次元に行けるのだろうと、次の機会を楽しみにしています。八木澤さんと「かわうち会」に幸せあらんことを!
祝鶴田さん個展開催
私もお招きいただいていたんですが、生憎都合で参加できず失礼いたしました。
しかしリピドーの旺盛な方たちが一杯いらっしゃると聞いて、私も勇気づけられる思いです。
個展開催をお祝い申し上げますとともに、双葉美協と地域の再興を祈念いたします。
しかし、素晴らしい試みでありました。
これこそパブリックアートだと思いました。絵画鑑賞の感動が音楽や文学を超えるときが来たのかもしれませんよ。

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