東京藝大卒業・修了作品展へ行く その4(終わり)

 誤解がないように断っておかないといけない。美大毎に卒業作品の傾向に違いがあるなんてことはほんとうならありえないのである。なぜなら、作品を制作するのは美大ではなく学生だから。美大生の個性は校風や教授の影響を受けて変わるようなものではないだろうし。

【写真 2014年東京藝大卒業・修了作品展より】
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 そういうわけで、美大毎に何らかの傾向を感じるとしたら、それは思い込みなのである。東京藝大にしたって、フェノロサと岡倉天心を奉って、まして日々二人を喜ばせようなどと心がけながら作品を制作している学生はいないと思う。

 そうは言っても、代表は感じるのである。東京藝大卒業・修了作品展にあって武蔵野美大卒業作品展にないもの。また、その逆のもの。そういったものがたしかにあると、そう思うのである。
 それが何なのかを言葉にするのはとっても難しいんだが、それこそが東京藝大の卒業・修了作品の面白さ素晴らしさなので、代表が考えていることをそのまま言ってみたい。

 ひと言でいうと、「作品のテーマ性が伝わってくるか否か」だ。

【写真 2014年東京藝大卒業・修了作品展より】
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 テーマそのものは違わない。千差万別。伝え方が違うと思う。

 つまり、なぜそのテーマを選んで、なぜそういう表現にして、なぜその材料を選んで、どれだけつくり込んだか、といったようなことが、そのテーマ性を伝えるために必然だと納得できること。その度合いが東京藝大の卒業・修了作品は高いと思う。高い作品が多いと思う。

【写真 2014年東京藝大卒業・修了作品展より】
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 なので美術のことを知らない代表でも「そうか!」「なるほどねー」と共感できる作品が多いのである。あるいは「そうじゃないんじゃないの?」と反応できるのである。それが可能なのはテーマが代表にも理解できる気がするからだ。

 「芸術作品というのは先入観なしに見て素直に感じるだけでいいのだ」という考え方がある。わからなくてもいいんだ、と。わからないということや、その結果の嫌悪感なんかも含めて芸術作品鑑賞の成果なんだ、と。「もし一方の内部で起こったことが他方に直接的に伝達されるのだとすれば、芸術全体が崩壊する」なんてことまでポール・ヴァレリーというフランス人の詩人は言っている。代表は納得できない。そういうことは言葉の遊びだと思う。

【写真 2014年東京藝大卒業・修了作品展より】
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 もしもそうだとしたら、作家は、鑑賞者が理解できない作品をなぜ作る必要があるのか。百歩譲って、自分勝手で作品を作るのはいいとしても、なぜ他人に見せるのか。また鑑賞者は、わかりもしない作品をどうしてわざわざ見に行く必要があるのか。好きとか嫌いとかがわかるだけで、なにも意味がないではないか。

【写真 2014年東京藝大卒業・修了作品展より】
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 わかリ合えたほうがいいに決まっているだろう、と代表は思うのである。わかり合う努力は作家には必要なくて鑑賞者には求められる、という理屈はおかしい。双方共に努力が必要だろうと思うわけである。

 それを実践しているのが、そのために、努力を惜しまず工夫をこらし高い技術が存分に注がれているのが東京藝大卒業・修了作品展の作品群だと代表は思っている。それゆえに、抽象的な作品であってもテーマと表現とがつじつまが合っている。作家の主張が明確に形になっている。だから、代表ごときでもテーマの輪郭を把握することができ、作品世界は奥が深いのだが、入口に立てるのである。面白く素晴らしいと感じられる。

【写真 2014年東京藝大卒業・修了作品展より】
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 まあ、でも、あくまでも代表が感じた東京藝大卒業・修了作品展の面白さ素晴らしさの解釈だ。他の皆さんが感じられることはまた違うだろうと思う。それでいいのだ。とにかく、まだ東京藝大卒業・修了作品展へ行ったことがない人はぜひ一度足を運んでみていただきたい。日展の数倍面白いと思います。

【写真 2014年東京藝大卒業・修了作品展より】
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 ところで、今度の卒展・修了展に東京藝大OBのうーたんが自転車を飛ばしてきてつきあってくれたので、会場をいっしょに巡りながら、代表がここに書いてきたようなことを話した。そうしたら、まさに藝大では、作品を制作するときに、テーマに対してどう表現するかといったことを徹底的に深堀りするんだよ、と教えてくれた。展示にしても、どの場所にどう展示をしたらもっとも効果的に見えるか、制作と同じくらい緻密に追求するんだそうだ。そういう教育方針がフェノロサと天心が残したものということだろうか。何の世界でもそうだが、努力の先にしか新しいものはないのである。

【写真 2014年東京藝大卒業・修了作品展より】
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 代表が感じたことは、そんなに外れていなかったんだな、と思った。また、来年も行きます。

 おわり
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